製造業の障害者雇用|現状を統計で解説・向いている職種と年収

製造業の障害者雇用の要点を図解したアイキャッチ画像

製造業は障害者雇用の主要な受け皿の一つです。「製造業で障害のある方が活躍できる仕事はあるのか」「企業はどんなサポートを行っているのか」「給与や働き方はどうなのか」と気になっている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、工場勤務15年の筆者が、製造業における障害者雇用の現状を公的統計で深掘りしつつ、向いている職種・企業の取り組み・年収・就職活動のポイントまで分かりやすく解説します。製造業への就職を検討されている方はぜひ参考にしてください。

目次

結論:製造業は障害者雇用の「定着しやすさ」に強みがある

先に結論をお伝えします。製造業は作業の細分化・マニュアル化・反復作業の多さという業務特性から、障害特性に合わせて仕事を切り出しやすく、長く働き続けやすい業界です。実際、民間企業全体の障害者雇用は年々拡大しており、厚生労働省の調査では雇用障害者数・実雇用率ともに過去最高を更新し続けています。

ただし2024年4月に法定雇用率が引き上げられたことで、企業側の採用ニーズも高まっています。求職者にとっては「選べる時代」になりつつある一方、職種ごとに賃金や働き方の差が大きい点には注意が必要です。本記事で全体像をつかんでください。

そもそも障害者雇用とは|法定雇用率と特例子会社の基礎

障害者雇用とは、障害者雇用促進法に基づき、一定規模以上の事業主が障害のある人を一定割合以上雇用する制度のことです。この割合を法定雇用率と呼びます。

民間企業の法定雇用率は、2024年4月に従来の2.3%から2.5%へ引き上げられました。さらに2026年7月には2.7%への引き上げが予定されています(厚生労働省・2023年告示)。対象となる事業主の範囲も拡大しており、企業は障害者採用を一層重視せざるを得ない状況です。

また、大手メーカーなどで多く見られるのが特例子会社です。これは障害者雇用に特化した子会社で、一定の要件を満たせば親会社グループ全体の実雇用率に算入できる仕組みです。専門的なサポート体制のもとで働けるため、障害のある方にとって有力な選択肢になります。

製造業の障害者雇用の現状を公的統計で読む

厚生労働省「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業に雇用されている障害者数は約67万7,461人で過去最高、実雇用率は2.41%(前年比0.08ポイント上昇)となりました(厚生労働省・2024年)。法定雇用率2.5%を達成した企業の割合は46.0%で、引き上げ直後のため前年より低下しています。

障害種別の内訳を見ると、雇用が拡大していることがよく分かります。

表1:障害種別の雇用障害者数の動向(民間企業)

障害種別 雇用障害者数 対前年比
身体障害者 約36万8,949人 +2.4%
知的障害者 約15万7,795人 +4.0%
精神障害者 約15万0,717人 +15.7%

出典:厚生労働省「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」(2024年)。とくに精神障害者の伸びが大きいのが近年の特徴です。製造業でも、業務の切り出しや配慮の工夫により精神障害・発達障害のある方の採用が広がっています。

なお製造業は従来から身体障害者の雇用者数が多い業界とされてきましたが、産業別の製造業単独の実雇用率は公表値の中で筆者が確認できなかったため、本記事では断定を避けています。産業別では「医療、福祉」が3.19%と最も高い水準にあります(厚生労働省・2024年)。

表2:法定雇用率の引き上げスケジュール(民間企業)

時期 法定雇用率 対象事業主
2023年度まで 2.3% 従業員43.5人以上
2024年4月〜 2.5% 従業員40.0人以上
2026年7月〜(予定) 2.7% 従業員37.5人以上

出典:厚生労働省告示(2023年)。雇用率が上がるほど企業の採用枠は広がります。求職者にとっては追い風といえるでしょう。

製造業が障害者雇用に向いている理由

製造業が障害のある方に適しているとされるのは、業務構造そのものに理由があります。

  • 作業内容を細かく分解しやすく、得意な工程だけを担当できる
  • 繰り返し作業が多く、習熟すれば安定して高い品質を出せる
  • 作業環境を物理的に整備しやすい(高さ調整・動線確保など)
  • マニュアル化された業務が多く、手順が明確で覚えやすい
  • これらの特性は、集中力や正確性といった強みを活かしやすく、職場定着につながります。

    製造業で障害のある方に向いている職種

    検品・検査作業

    製品の外観をチェックしたり、寸法を測定したりする仕事です。集中力が高く、細かい作業が得意な方に適しています。座り仕事が中心の職場もあり、身体的な負担を軽減できます。

    組立・梱包作業

    部品を組み立てたり、完成品を箱に詰めたりする作業です。手順が決まっているため覚えやすく、自分のペースで作業を進められる職場もあります。

    仕分け・ピッキング作業

    倉庫や物流センターで、指示書に従って部品や製品を仕分ける仕事です。体を動かすことが好きな方に向いており、作業手順が明確で取り組みやすいです。

    データ入力・事務作業

    製造現場のデータ入力や在庫管理の事務作業も、障害のある方が活躍している職種です。PCの基本操作ができれば応募可能な求人が多くあります

    清掃・環境整備

    工場内の清掃や設備の簡単なメンテナンスを行う仕事です。作業範囲と手順が明確で、毎日のルーティンとして取り組める点が特徴です。

    食品加工・調理補助

    食品工場での下処理や盛り付け、包装作業なども適性のある職種です。チームで作業を行うため、分からないことをすぐに聞ける環境が整っています。

    企業の取り組み事例

    障害者雇用に積極的な製造業の企業では、さまざまなサポート体制を整えています。

    専任のジョブコーチの配置

    障害のある社員一人ひとりに専任のジョブコーチがつき、業務の習得や職場での困りごとをサポートする体制を整えている企業があります。定期的な面談を通じて、無理なく働き続けられる環境を維持しています

    作業環境のバリアフリー化

    車いすの方でも作業しやすいように作業台の高さを調整したり、視覚障害のある方のために音声ガイドを導入したりする取り組みが行われています。

    短時間勤務制度の導入

    体力面や通院の必要性に配慮して、1日4〜6時間の短時間勤務制度を設けている企業もあります。無理のない勤務時間から始めて、徐々にフルタイムに移行できる仕組みです。

    特例子会社の設立

    大手メーカーでは、障害者雇用に特化した特例子会社を設立し、専門的なサポート体制のもとで雇用を行っています。特例子会社では障害の種類や程度に応じた業務配分がきめ細かく行われます。

    筆者の体験談

    筆者が勤務していた工場にも、障害者雇用枠で入社した同僚がいました。聴覚障害のある方で検品ラインに就いており、目視検査の精度はチーム内でトップクラス。コミュニケーションは筆談やジェスチャー中心でしたが、仕事の質に障害の有無は関係ないと実感しました。大切なのは、本人の得意なことを活かせる仕事に就くことだと思います。

    製造業の障害者雇用の年収・賃金と関連資格

    気になる賃金水準についても、公的データで確認しておきましょう。厚生労働省「令和5年度 障害者雇用実態調査」によると、障害種別の1か月あたり平均賃金は次のとおりです。

    表3:障害種別の月平均賃金

    障害種別 1か月の平均賃金
    身体障害者 23万5千円
    知的障害者 13万7千円
    精神障害者 14万9千円

    出典:厚生労働省「令和5年度 障害者雇用実態調査」(2023年調査)。賃金差の背景には、勤務時間(短時間勤務の比率)や担当業務の違いがあります。フルタイム勤務や責任のある業務に就くことで収入を高められる余地があります。

    収入アップや職域拡大を目指すなら、以下のような資格・スキルが役立ちます。

    資格・スキル 活かせる主な職種
    フォークリフト運転技能講習 倉庫・運搬・物流工程
    MOS(PC操作)・タイピング データ入力・事務
    品質管理(QC検定など) 検品・検査・品質保証
    食品衛生関連の知識 食品加工・調理補助

    ※資格の有無で給与が一律に決まるわけではありませんが、できる業務の幅が広がることが安定就労につながります。

    就職活動のポイント

    障害者就労支援機関を活用する

    ハローワークの障害者窓口や、就労移行支援事業所、障害者職業センターなど、専門の支援機関を活用することで、自分に合った求人を効率的に見つけられます

    職場見学や実習を積極的に行う

    応募前に職場見学や短期の職場実習を行うと、実際の作業内容や職場の雰囲気を確認できます。ミスマッチを防ぐために有効な方法です。

    自分の得意・不得意と必要な配慮を整理する

    面接では「どんな作業が得意か」「どんな配慮があると働きやすいか」を具体的に伝えることが大切です。事前に自己分析を行い、言語化しておきましょう。企業には合理的配慮の提供が求められているため、遠慮なく相談して構いません。

    製造業の仕事内容について詳しく知りたい方は、製造業の仕事内容ガイドも合わせてご覧ください。

    よくある質問(FAQ)

    Q. 製造業の障害者雇用は未経験でも応募できますか?

    はい。検品・組立・清掃・データ入力など、未経験から始められる職種が多くあります。マニュアルやOJTが整っている職場を選ぶと安心です。

    Q. 精神障害・発達障害でも製造業で働けますか?

    働けます。厚生労働省の調査でも精神障害者の雇用は前年比+15.7%と大きく伸びており(2024年)、業務の切り出しや配慮の工夫で活躍する方が増えています。自分に合う作業ペースの職場を選ぶことが鍵です。

    Q. オープン就労とクローズ就労はどちらが良いですか?

    障害を開示する「オープン就労」は合理的配慮を受けやすく、定着しやすい傾向があります。一方で求人の選択肢を広く持ちたい場合はクローズ就労を選ぶ方もいます。配慮の必要度に応じて判断しましょう。

    Q. 短時間勤務から始めてフルタイムに移れますか?

    多くの企業で、1日4〜6時間の短時間勤務から始め、体調や習熟に合わせて勤務時間を延ばす仕組みを用意しています。面接時に移行制度の有無を確認しておくと安心です。

    Q. 製造業の障害者雇用で年収を上げるには?

    フルタイム勤務への移行、フォークリフトや品質管理などの資格取得、担当工程の拡大が有効です。賃金は勤務時間と業務範囲の影響が大きいため、できる業務を着実に増やしていくことがポイントです。

    Q. 特例子会社と一般の障害者雇用枠はどう違いますか?

    特例子会社は障害者雇用に特化し、サポート体制がより手厚い傾向があります。一般枠は職域が広く一般社員と同じ職場で働けるのが特徴です。どちらが向くかは求める働き方によります。

    まとめ:自分に合った職場を見つけよう

    製造業は障害のある方が活躍できるフィールドが広く、業務特性から定着しやすい業界です。法定雇用率の引き上げで企業の採用ニーズも高まっており、求職者にとっては選択肢が広がっています。一方で、職種や勤務時間によって賃金差があるため、自分の強みを活かせて、必要な配慮を受けられる職場かどうかを見極めることが大切です。

    まずは支援機関も活用しながら、幅広く求人情報を集めることから始めましょう。

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    この記事を書いた人

    工場勤務歴15年。愛知県の自動車部品工場でライン作業・検品・溶接・フォークリフトを経験。20代で住み込み寮生活を3年間送り、カップル寮も経験。班長として後輩指導も担当。35歳で製造業から転身し、現在は工場勤務の経験を活かしてライターとして活動中。

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