電気工事士の難易度・年収・取り方を解説【2026】

電気工事士の難易度・年収・取り方を解説の要点を図解したアイキャッチ画像

住宅のコンセント増設から工場の受電設備改修まで、電気工事を行うには「電気工事士」の国家資格が法律で必須とされています。電気工事士法に基づく業務独占資格で、第二種と第一種の2区分があり、第二種の合格率は学科60%前後・技能70%前後、第一種は学科40%前後・技能60%前後。勉強時間の目安は第二種で50〜100時間、第一種で100〜150時間と、国家資格としては比較的取得しやすい部類に入ります。

一方で、資格手当は月3,000〜2万円、転職市場では年収400万〜600万円帯の求人が安定的に並び、独立開業の道もある実用性の高い資格です。この記事では、工場勤務15年で第二種電気工事士として保安・改修工事に関わった本田健一が、試験概要・難易度・勉強時間・年収・活躍する現場・キャリアパスまでを実体験を交えて解説します。

この金額が製造業全体のどのあたりかは、製造業の平均年収|職種別・年代別の相場で確認できます。

目次

電気工事士の結論|まず押さえたい3つのポイント

結論を先に伝えます。電気工事士の取得を検討するうえで、最初に押さえておきたい要点は次の3つです。

  • 第二種電気工事士は学科+技能の2試験で、合格率は学科60%・技能70%前後、勉強時間50〜100時間で取得可能な実用国家資格
  • 第一種は500kW未満の高圧設備まで扱える上位区分で、合格率は学科40%・技能60%前後、勉強時間100〜150時間が目安
  • 取得すると資格手当月3,000〜2万円、転職時の年収相場は400万〜600万円で、電気工事店・工場保全・ビルメンテナンス・独立開業まで選択肢が広がる

製造業のキャリアアップ資格として並行検討するなら、製造業で評価される資格一覧もあわせて確認しておくと、自分の現状に合う資格選定がしやすくなります。

電気工事士とは|資格の役割と必要性

電気工事士とは、電気工事士法に基づき、一般住宅・店舗・ビル・工場などの電気工作物の工事に従事するための国家資格です。経済産業省所管の業務独占資格で、第二種と第一種の2区分があり、扱える電気工作物の範囲が異なります。

なぜ法律で資格が必須とされているのか

電気工事は、施工不良が感電・漏電・火災といった重大事故に直結するため、「無資格者による工事を法律で禁止」し、専門教育を受けた有資格者だけが作業できる構造にすることで、人命と建物の安全を確保しています。本田が在籍していた化学工場でも、コンセント1口の増設からモーター動力盤の改修まで、すべて電気工事士の有資格者が施工し、無資格者は工具を握ることさえ許されませんでした。

軽微な工事との線引き

例外として、差込プラグの取り替え、ベルや小型LEDの電池工事など、感電・火災リスクが極めて低い「軽微な工事」のみ無資格でも可能です。ただし、コンセントの増設・スイッチ交換・配線の引き直しなどは無資格で行うと電気工事士法違反となり、3万円以下の罰金が科されます。DIY感覚で行ってしまうケースが後を絶たないため、依頼する側も施工する側も注意が必要です。

第二種と第一種の違い|扱える電気工作物の範囲

2区分の違いを表にまとめます。

区分 扱える範囲 主な現場 合格率(学科/技能)
第二種 一般用電気工作物(600V以下で受電する設備、住宅・小規模店舗) 住宅・店舗・小規模事務所 約60% / 約70%
第一種 第二種の範囲+自家用電気工作物(最大電力500kW未満の工場・ビル等) 工場・ビル・大型店舗 約40% / 約60%

住宅メインの電気工事店であれば第二種で十分カバーできますが、工場保全・ビルメンテナンス・プラントの改修工事に携わるなら第一種が必須です。本田の工場でも、新人は第二種から取得し、3〜5年目で第一種へステップアップする流れが標準でした。

受験資格|年齢・学歴・実務経験は不要

電気工事士は、第二種・第一種ともに受験資格に年齢・学歴・実務経験の制限がありません。誰でも受験でき、合格すれば免状交付申請が可能です。ただし、第一種は試験合格後、3年以上の電気工事の実務経験(または大学・高専で電気工学を修めた場合は学歴に応じた経験)を積まないと免状が交付されないため、注意が必要です。

つまり、第一種は試験には学生でも合格できるが、免状交付には実務経験が必須という二段階構造になっています。電気工事店に就職して実務を積みながら第一種に挑むのが王道ルートです。

試験内容|学科試験と技能試験の2段階

電気工事士試験は、学科試験(マークシート)と技能試験(実技)の2段階で構成されます。学科に合格した者だけが技能試験に進める仕組みです。

学科試験(CBT方式/筆記方式)

2023年度から第二種でCBT方式(コンピュータ試験)が導入され、2024年度には第一種でも採用されました。50問・120分・60点(30問)以上で合格です。出題範囲は次のとおりです。

  • 電気に関する基礎理論(オームの法則・抵抗計算など)
  • 配電理論および配線設計
  • 電気機器・配線器具ならびに材料および工具
  • 電気工事の施工方法
  • 一般用電気工作物の検査方法
  • 配線図(複線図の読み取り)
  • 電気工事に関する法令

技能試験(実技)

技能試験は、事前に公表される候補問題13問(第二種)/10問(第一種)の中から1問が出題される独特な方式です。試験時間は第二種40分・第一種60分で、配線図に従って電線を切断・接続・器具取り付けを行い、欠陥なく完成させる必要があります。

本田が受験したときも、候補問題は事前公表されていたので、自宅で全パターンを2〜3周練習し、本番では落ち着いて時間内に完成できました。技能試験は「練習量がそのまま合格率に直結する」のが特徴です。

合格率と難易度|国家資格としては取得しやすい部類

直近の合格率は次のとおりです(電気技術者試験センター公表値の概数)。

区分 学科合格率 技能合格率 総合合格率
第二種 約60% 約70% 約45%
第一種 約40% 約60% 約25%

電験三種(合格率10%前後)や危険物甲種(合格率30%台)と比較すると、電気工事士は国家資格の中では難易度が低めに位置付けられます。特に第二種は、文系出身・電気未経験からでも50〜100時間の勉強で十分合格圏に届く資格です。

勉強時間と勉強方法|第二種は50〜100時間が目安

合格までの勉強時間の目安は、第二種で50〜100時間、第一種で100〜150時間です。1日1時間のペースでも、第二種なら2〜3か月で合格レベルに到達できます。

学科対策

市販のテキスト1冊+過去問10年分が王道です。電気工事士の学科は過去問の使い回し率が高く、過去問を3周すれば6〜7割は本番でそのまま解けます。本田も学科は過去問中心の独学で1か月、合計40時間ほどで突破しました。

技能対策

技能試験は、工具セット(VVFストリッパー・電工ナイフ・圧着工具など)と練習用電線・器具セット(候補問題13回分)を購入し、全候補問題を最低2周練習するのが定石です。練習用セットは1万5,000〜2万円程度、工具は1万円前後。独学でも十分合格できますが、技能試験対策動画(YouTubeで多数公開)を併用すると効率が上がります。

年収と資格手当|400万〜600万円が相場

電気工事士の年収相場は次のとおりです(求人媒体の集計値ベース)。

経験年数 第二種のみ 第一種保有
1〜3年(見習い) 300万〜380万円
4〜10年(中堅) 380万〜500万円 450万〜580万円
11年〜(ベテラン/施工管理兼任) 450万〜580万円 550万〜700万円

資格手当は会社により異なりますが、第二種で月3,000〜8,000円、第一種で月1万〜2万円が一般的です。さらに、第一種電気工事施工管理技士や認定電気工事従事者を組み合わせると、手当総額が月3万円を超えるケースもあります。

独立開業した場合、住宅の電気工事1件あたり3万〜10万円の利益を確保でき、個人事業主として年収700万〜1,000万円以上を実現する職人も珍しくないのが、この資格の大きな魅力です。

活躍する現場|電気工事店・工場・ビルメンの3軸

電気工事士の主な活躍フィールドは3つに大別されます。

電気工事店(住宅・店舗中心)

新築住宅の屋内配線、リフォームに伴うコンセント増設、店舗の改装工事などを担う、最もポピュラーな就職先です。第二種電気工事士があれば即戦力として歓迎され、繁忙期(春の引越しシーズン・年末)は残業も増えますが、その分日給・出来高で稼げます。

工場の電気保全

製造業の工場では、生産設備の動力配線・制御盤改修・受変電設備の保守を担う電気保全担当として、電気工事士が必須です。本田が在籍した化学工場でも、設備保全課に第二種・第一種電気工事士が常時5〜6名在籍し、夜勤・休日対応のシフトを組んでいました。工場勤務は給与が安定し、夜勤手当・交替勤務手当も加算されるため、年収面では電気工事店より高めになるケースが多いです。

ビルメンテナンス(設備管理)

オフィスビル・商業施設・病院などの常駐設備管理員として、館内の電気・空調・給排水を一元管理する仕事です。電気工事士+第二種電気主任技術者(電験三種)+ボイラー技士+危険物乙4の「ビルメン4点セット」を揃えると、年収400万〜550万円帯のビルメン求人が広範囲で選べるようになります。

キャリアパス|第二種→第一種→施工管理→独立の王道

電気工事士のキャリアパスは、第二種電気工事士→第一種電気工事士→電気工事施工管理技士(2級→1級)→独立開業もしくは管理職というステップアップが王道です。

30代で第一種+1級施工管理技士を揃えると、現場代理人として年収600万〜800万円のポジションが視野に入ります。また、関連資格として第三種電気主任技術者(電験三種)を取得すると、工事+保安の両面でキャリアの幅が一気に広がります。電気工事士で現場経験を積みながら電験三種にチャレンジするのが、製造業・ビルメン業界で年収600万円超を狙う際の定番ルートです。

経験者の周辺事例|化学工場での電気工事士の日常

本田が在籍していた化学工場の電気保全担当の1日の例を紹介します。

  • 8:00 朝礼・KY(危険予知)活動:本日の作業内容と危険ポイントを共有
  • 9:00 設備点検:制御盤・動力盤の絶縁抵抗測定、端子増し締め
  • 13:00 改修工事:ポンプ更新に伴う動力配線の張り替え(第二種電気工事士が施工、第一種電気工事士が監督)
  • 16:00 記録・引き継ぎ:作業記録を保全システムに入力し、夜勤担当へ引き継ぎ

工場の電気工事士は、新築の電気工事店のような「工事だけ」ではなく、点検・修理・改修・更新のすべてを一気通貫で担うため、電気の知識が幅広く身につくのが特徴です。住み込み寮を完備する工場も多く、地方の大規模工場では家賃補助込みで実質可処分所得が高くなるケースもあります。電気工事士が活かせる工場求人を確認しておくと、自分の経験と希望条件に合うポジションを比較しやすくなります。

あわせて読みたい:半導体製品製造技能士の取り方

まとめ|電気工事士は「実用性」と「キャリアの広さ」を両立する資格

電気工事士は、第二種なら50〜100時間の勉強で取得でき、年収400万〜600万円の安定した仕事と、独立開業まで含めた幅広いキャリアの選択肢を手にできる、コストパフォーマンスの非常に高い国家資格です。

  • 受験資格に制限がなく、誰でも挑戦できる
  • 第二種で住宅・店舗、第一種で工場・ビル、と扱える範囲が段階的に広がる
  • 電験三種・施工管理技士と組み合わせると年収600万円超も射程

製造業でキャリアを築くなら、製造業で評価される資格一覧で全体像を押さえつつ、まずは第二種電気工事士から着手するのが、失敗の少ない王道ルートです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 電気工事士は独学で合格できますか?

はい、第二種・第一種ともに独学で十分合格可能です。市販テキスト1冊+過去問10年分+技能練習セットを揃えれば、合計2万〜3万円の投資で完結します。技能試験はYouTubeの解説動画と組み合わせると効率的です。

Q2. 第二種と第一種、どちらから受けるべきですか?

受験資格に制限がないため、いきなり第一種を受けることも可能ですが、第二種から段階的に取得するのが現実的です。第一種は範囲が広く実技難度も高いため、第二種で基礎を固めてから挑むほうが学習効率が良くなります。

Q3. 試験は年に何回受けられますか?

第二種は2023年度のCBT化以降、上期(5〜6月)と下期(10〜11月)の年2回チャンスがあります。第一種も上期・下期の年2回(2024年度〜)です。落ちても半年後に再挑戦できるため、計画が立てやすくなりました。

Q4. 第一種は試験に合格すれば免状をもらえますか?

いいえ、第一種は試験合格後に3年以上の電気工事実務経験(大学・高専で電気工学修了者は学歴に応じた経験)を積まないと免状が交付されません。電気工事店や工場で実務を重ねながら申請するのが一般的です。

Q5. 電気工事士は将来AI・自動化で仕事が減りませんか?

現場の配線工事・改修工事は、建物ごとに条件が異なり手作業が必須のため、AIや自動化に置き換わりにくい仕事です。むしろ、再生可能エネルギー設備・EV充電器・蓄電池の普及で電気工事士の需要はむしろ拡大傾向にあります。

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この記事を書いた人

工場勤務歴15年。愛知県の自動車部品工場でライン作業・検品・溶接・フォークリフトを経験。20代で住み込み寮生活を3年間送り、カップル寮も経験。班長として後輩指導も担当。35歳で製造業から転身し、現在は工場勤務の経験を活かしてライターとして活動中。

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