時給制とは、働いた時間に応じて賃金が決まる仕組みです。1時間あたりの単価が決まっていて、実際に働いた時間を掛けた金額が支給されます。パートやアルバイト、派遣社員に多い形ですが、正社員でも時給制を採用している会社はあります。
結論:時給制の要点は「働いた時間だけ支払われる」という一点に尽きます。残業代の計算が分かりやすい反面、祝日が多い月や自分が休んだ月は月収がそのまま下がります。月給制のように毎月同じ額が入るわけではないので、年間の手取りを考えるなら「月収の最高額」ではなく「稼働日数が少ない月の額」で生活が回るかを見るのが安全です。
この記事を書いている本田健一は、製造業7社・15年の現場経験者です。時給制と月給制の両方で働いた経験から、求人票では分かりにくい実際の差をお伝えします。
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時給制とは|働いた時間だけ賃金が発生する
時給制は、1時間あたりの単価(時給)に実労働時間を掛けて賃金を計算する方式です。時給1,300円の職場で8時間働けば、その日の賃金は10,400円になります。
ポイントは働いていない時間には賃金が発生しないことです。会社都合の休業でない限り、休んだ日のぶんは支給されません。有給休暇を使えば賃金は出ますが、有給の残日数を超えて休むと、その日数ぶんがそのまま月収から引かれます。
最低賃金を下回ることはできない
時給は都道府県ごとの最低賃金を下回れません。地域別最低賃金は毎年10月ごろに改定され、都道府県によって金額が違います(出典:厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」)。
求人票の時給が、その地域の最低賃金ぎりぎりかどうかは応募前に確認できます。改定のタイミングで時給が上がるかどうかも、面接で聞いておくと入社後の見通しが立ちます。
時給制・日給制・月給制の違い
給与形態は大きく3つに分かれます。同じ仕事内容でも、どの形態かで月収の安定度が変わります。
| 項目 | 時給制 | 日給制 | 月給制 |
|---|---|---|---|
| 計算の単位 | 1時間 | 1日 | 1か月 |
| 主な対象 | パート・アルバイト・派遣 | 建設・警備・短期 | 正社員・契約社員 |
| 休んだとき | その時間ぶん減る | その日ぶん減る | 欠勤控除がある場合のみ減る |
| 祝日が多い月 | 月収が下がる | 月収が下がる | 変わらない |
| 残業代 | 時給×1.25以上で明快 | 日給から時間単価を出して計算 | 基本給から時間単価を出して計算 |
| 早退・遅刻 | その時間ぶん減る | 控除の扱いは会社による | 控除の扱いは会社による |
いちばん大きな違いは、祝日や会社カレンダーで稼働日数が変わる月の扱いです。月給制なら月収は変わりませんが、時給制と日給制は稼働日数がそのまま収入に響きます。日給制の詳しい仕組みは日給とは?工場の相場・月給換算・手取りで解説しています。
正社員でも時給制はあるのか
あります。正社員かどうかは雇用契約に期間の定めがあるかで決まるもので、賃金の計算方法とは別の話です。期間の定めのない雇用契約を結んでいれば、賃金が時給計算でも正社員です。
実際に時給制の正社員が多いのは、次のような職場です。
- 稼働が季節で変動する工場:繁忙期と閑散期で労働時間の差が大きい
- 交代勤務が中心の職場:勤務パターンによって月の労働時間が変わる
- 派遣から直接雇用に切り替わった職場:派遣時代の時給を引き継ぐ形
正社員で時給制のときに確認すること
正社員として入るなら、時給以外の条件が月給制の正社員と揃っているかが重要です。
| 確認項目 | 見るところ |
|---|---|
| 賞与 | 時給制でも賞与があるか。ある場合の算定基準 |
| 昇給 | 時給が上がる仕組みがあるか。年1回か、評価によるか |
| 退職金 | 制度の有無と、勤続何年から対象か |
| 社会保険 | 健康保険・厚生年金・雇用保険・労災の加入 |
| 有給休暇 | 付与日数と、取得時に何時間分が支給されるか |
| 休業時の扱い | 会社都合で稼働がない日に休業手当が出るか |
とくに見落とされやすいのが、会社都合で工場が止まった日の扱いです。労働基準法では、使用者の責任で休業させた場合に平均賃金の6割以上の休業手当を支払う義務があります(出典:厚生労働省「労働条件・職場環境に関するルール」)。時給制だと減収の影響が直接出るため、ここが労働条件通知書にどう書かれているかを確認してください。
月収シミュレーション|稼働日数で手取りはどう変わるか
時給制でいちばん実感しにくいのが、月ごとの収入の振れ幅です。時給1,300円・1日8時間で働いた場合を、稼働日数別に並べます。
| 稼働日数 | 月の労働時間 | 額面(残業なし) | 手取りの目安 | どんな月か |
|---|---|---|---|---|
| 18日 | 144時間 | 187,200円 | 約150,000円 | 年末年始・GW・お盆 |
| 20日 | 160時間 | 208,000円 | 約167,000円 | 祝日が多い月 |
| 21日 | 168時間 | 218,400円 | 約175,000円 | 標準的な月 |
| 22日 | 176時間 | 228,800円 | 約183,000円 | 祝日のない月 |
手取りは額面の約8割として計算した目安です。社会保険料と税で2割前後が引かれるため、実際の金額は扶養家族の人数や自治体によって前後します。給与明細のどこに何が引かれているかは工場の給料明細の見方|控除と手当で解説しています。
18日の月と22日の月では、額面で41,600円・手取りで約33,000円の差が出ます。この差は毎年決まった時期に来るので、年末年始やお盆のある月を想定して生活費を組んでおくと安心です。
残業代は時給制のほうが分かりやすい
残業したときの割増賃金は、時給制だと計算が明快です。時給1,300円なら、法定時間外の割増は25%以上なので1,625円以上になります。深夜(22時〜翌5時)はさらに25%が加算されます。
月給制の場合は、まず基本給から1時間あたりの単価を割り出す必要があり、何が算定の対象になるかで金額が変わります。時給制は「自分の1時間がいくらか」が最初から分かっているので、明細の検算がしやすいのが利点です。計算方法は工場の残業代計算|25%/35%/50%の条件にまとめています。
時給制のメリット
時給制は不安定な印象を持たれがちですが、働き方によっては月給制より有利になります。
働いた時間がそのまま収入になる
残業した時間、休日に出勤した時間が、すべて単価に反映されます。月給制でみなし残業が設定されている職場だと、一定時間までの残業は追加の支払いがありませんが、時給制にはその仕組みがありません。働いた時間と収入が一対一で対応します。
シフトの自由度が高い
週の勤務日数や1日の勤務時間を選べる職場が多く、家庭の事情や体力に合わせて調整できます。子どもの学校行事に合わせて勤務を組む、副業と両立する、といった働き方がしやすくなります。
収入の計算が単純で検算しやすい
時給と労働時間さえ分かれば、支給額は自分で計算できます。給与明細を見て「思っていた額と違う」と感じたとき、勤怠記録と突き合わせればどこがずれているかがすぐ分かります。
時給制のデメリット
稼働日数が少ない月は収入が下がる
先ほどの早見表のとおり、年末年始やお盆のある月は手取りが3万円前後下がることがあります。固定費の支払いが月初に集中している場合は、稼働日数の少ない月に備えて余裕を持たせておく必要があります。
体調を崩すと直接収入に響く
風邪で3日休めば、時給1,300円・8時間換算で31,200円が減ります。有給休暇が残っていれば充当できますが、入社半年未満だと有給が付与されていないため、休みがそのまま減収になります。
賞与や退職金の対象外になることがある
時給制でも正社員なら賞与や退職金の対象になる会社はありますが、対象外としている会社もあります。年収で比べると、月給制の正社員との差が賞与のぶんだけ開くことになります。求人票の「賞与あり」が時給制の従業員にも適用されるかは、面接で確認してください。
住宅ローンなどの審査で不利になる場合がある
金融機関の審査では、収入の安定性が見られます。時給制でも勤続年数と源泉徴収票があれば審査に通る例は多いものの、月給制に比べて説明を求められる場面が増えます。
時給を上げるには
時給制の収入は、時給そのものを上げるか、働く時間を増やすかの二択です。時間を増やすのは体力の限界があるため、単価を上げるほうが現実的です。
| 方法 | 上がり幅の目安 | 期間 |
|---|---|---|
| 資格を取る(フォークリフト・玉掛け・危険物など) | 時給50〜200円 | 数日〜数か月 |
| 交代勤務に入る | 深夜割増で実質25%増 | すぐ |
| より条件のいい職場に移る | 時給100〜300円 | 1〜2か月 |
| 直接雇用に切り替える | 賞与・手当が加わる | 会社の制度による |
いちばん確実なのは、資格を取ったうえで求人を比べ直すことです。同じ地域・同じ職種でも、企業によって時給に200円以上の差があることは珍しくありません。時給が200円違えば、月160時間で32,000円・年間では384,000円の差になります。
工場でまず狙いやすいのはフォークリフトです。試験の内容はフォークリフト学科試験の出題範囲と実技のコツにまとめています。製造業全体の給与水準を知りたい方は製造業の平均年収|年代・業種・地域別をご覧ください。
派遣なら時給交渉ができる場合がある
派遣社員の時給は、派遣会社と派遣先の契約で決まります。契約更新のタイミングであれば、担当営業に交渉の余地があるか相談できます。交渉が通りやすいのは、資格を取得した・工程を任されるようになった・欠勤がないといった、具体的な材料があるときです。
応募前に確認したい5項目
時給制の求人に応募するとき、時給の額だけを見て決めると入社後に差が出ます。次の5点を求人票と労働条件通知書で確認してください。
- 時給に何が含まれるか:交通費込みか別途か。込みの場合、遠方から通うと実質の時給が下がります
- 月あたりの想定労働時間:月160時間なのか176時間なのかで、月収は2万円以上変わります
- 残業の有無と月平均時間:残業込みの月収例が出ている求人は、残業がない月の額を計算し直します
- 社会保険の加入条件:週の所定労働時間によって加入の可否が変わります
- 賞与・昇給の対象か:時給制の従業員が対象に含まれるかを明記してもらいます
月収例が「25万円以上可能」と書かれている求人は、その内訳を必ず確認してください。残業40時間・深夜勤務・皆勤手当をすべて満たした場合の上限額であることが多く、標準的な月の額とは差があります。
時給制が向いている人・月給制が向いている人
| 時給制が向く | 月給制が向く | |
|---|---|---|
| 働き方 | 勤務日数や時間を調整したい | 毎月同じリズムで働きたい |
| 収入 | 働いたぶんだけ増やしたい | 毎月の額を固定したい |
| 残業 | 残業してでも稼ぎたい | 残業は少ないほうがいい |
| ライフプラン | 短中期で貯める目標がある | ローンなど長期の支払いがある |
| 体力 | 体調が安定している | 休みが読めない事情がある |
短期間で集中して貯めたい人には時給制、家計を固定したい人には月給制が合います。どちらが優れているという話ではなく、いまの生活に合うほうを選ぶのが正解です。給与形態の全体像は給与形態・働き方の記事一覧で比べられます。
まとめ|時給制は「稼働日数が少ない月」で判断する
- 時給制は働いた時間に応じて賃金が決まる仕組みで、正社員でも採用されている
- 祝日の多い月と少ない月で、手取りに3万円前後の差が出る
- 残業代の計算が明快で、みなし残業のような仕組みがない
- 正社員で時給制なら、賞与・昇給・退職金の対象かを必ず確認する
- 収入を増やす近道は、資格を取ったうえで求人の時給を比べ直すこと
時給制の求人を選ぶときは、いちばん条件のいい月ではなく、いちばん稼働日数が少ない月の金額で生活が成り立つかを見てください。そこがクリアできていれば、残業や休日出勤のある月はそのまま貯蓄に回せます。
よくある質問(FAQ)
Q. 正社員なのに時給制なのは違法ですか?
違法ではありません。正社員かどうかは雇用契約に期間の定めがあるかで決まり、賃金の計算方法は会社が決められます。ただし、時給が地域別最低賃金を下回ることはできません。
Q. 時給制でも有給休暇はもらえますか?
もらえます。雇入れの日から6か月継続して勤務し、所定労働日の8割以上出勤していれば付与されます。週の所定労働日数が少ない場合は、日数に応じた比例付与になります。
Q. 時給制でもボーナスは出ますか?
会社によります。時給制の従業員も対象としている会社と、月給制のみを対象としている会社があります。求人票の「賞与あり」が自分に適用されるか、応募時に確認してください。
Q. 時給制から月給制に変わることはありますか?
あります。派遣から直接雇用に切り替わるとき、契約社員から正社員に登用されるときに、月給制へ移行する例が多く見られます。切り替えの条件を入社時に聞いておくと道筋が立てやすくなります。
Q. 時給制で社会保険には入れますか?
入れます。週の所定労働時間と月の賃金が加入条件を満たしていれば、時給制でも健康保険と厚生年金の対象になります。雇用保険は週20時間以上の勤務などが条件です。
Q. 時給1,300円だと年収はいくらになりますか?
1日8時間・月21日勤務で残業がない場合、額面で年間約262万円です。月20時間の残業があれば年収は約300万円になります。賞与の有無で総額はさらに変わります。
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