電子工作や基板補修の入門として最初に直面するのが「はんだ付けは難しそう」という壁です。はんだ付けのやり方は「予熱(こてを当てる)→はんだ供給→冷却」の3ステップで、各ステップの秒数と温度を守れば、初心者でも光沢のあるきれいな接合ができます。
この記事では電子部品工場で15年勤務し、ライン作業者として数万点のはんだ付けを見てきた本田健一が、はんだ付けの基本手順5ステップ、電子部品・基板での具体的なコツ、イモはんだ・冷えはんだなどの失敗例と原因、必要な道具、はんだ付けの仕事と年収相場まで、現場の実感を交えて解説します。
はんだ付けの結論|3ステップで覚える基本
記事の結論を先にまとめます。はんだ付けをこれから始める人、いつもイモはんだになって悩んでいる人がまず押さえたい要点は次の3つです。
- はんだ付けのやり方は「予熱(1〜2秒)→はんだ供給(1〜2秒)→冷却(2〜3秒)」の3ステップ。合計5秒前後で1点を仕上げるのが基準
- こて先温度は340〜360℃が標準、こて先は常に濡れた状態(銀色に光る状態)を保つ。これだけでイモはんだの8割は防げる
- はんだは「こて先」に当てるのではなく、予熱した部品とランド(基板の銅箔)の境目に当てて溶かす。これがきれいな富士山形ビードの絶対条件
はんだ付けは未経験から始められる職種で、電子部品工場や電気機械製造業で常に需要があります。仕事として目指したい人は、未経験OKの工場求人一覧で「電子部品組立・はんだ付け」の求人を見ておくと、入社後の研修でこの3ステップを実技で身につけられます。
はんだ付けとは|原理と用途
はんだ付けとは、金属同士を「はんだ」と呼ばれる合金で接合する技法です。母材(部品の端子やランド)自体は溶かさず、融点が低いはんだだけを溶かして橋渡しさせる点で、母材ごと溶かす溶接とは原理が異なります。溶接との違いは溶接の仕事内容で詳しく比較しています。
使われるはんだは大きく2種類です。鉛入りはんだ(Sn63/Pb37)は融点183℃でなじみが良く電子工作向け、鉛フリーはんだ(Sn-Ag-Cuなど)は融点217〜220℃で工業製品の主流です。EUのRoHS指令以降、量産品は鉛フリーが標準で、現場では温度設定を20〜30℃高くして対応します。
用途は電子基板の組立・補修、配線の接続、装飾金属の接合まで幅広く、特に電子部品工場のライン作業や試作・補修部門で日常的に使われます。電子部品工場の働き方は電気機械製造業の仕事内容でまとめています。
はんだ付けの基本手順5ステップ
はんだ付けの「やり方」を分解すると、準備2ステップ+実作業3ステップの計5ステップになります。初心者がつまずくのはほぼ全て「予熱不足」と「こて先掃除不足」のどちらかで、最初の2ステップを丁寧にやるだけで仕上がりが激変します。
ステップ1:道具と部品の準備
はんだごて・糸はんだ・こて先クリーナー・はんだ吸取線・耐熱マットを手元に揃え、こてスタンドにこてを差して電源を入れます。こて先温度は鉛入りなら320〜340℃、鉛フリーなら340〜360℃で設定。立ち上がりに2〜3分かかるので、その間に部品リードを基板穴に通し、軽く折り曲げて固定しておきます。
ステップ2:こて先の掃除と予備はんだ
こてが温まったら、湿らせたスポンジまたは銅たわしクリーナーでこて先を拭き、酸化膜を除去します。掃除直後、糸はんだをこて先に少量(1〜2mm分)溶かして「予備はんだ」をのせるのが最重要のコツです。予備はんだがないと熱伝導が悪く、点で接触するため部品が温まらずイモはんだ確定になります。
ステップ3:予熱(こてを当てる)
こて先を「ランド(基板の銅箔)」と「部品リード(部品の足)」の両方に同時に触れさせ、1〜2秒待ちます。予備はんだの面で接触させると熱が一気に伝わり、両方が同時にはんだの融点まで上がります。ここで両方を温めることが、はんだが部品とランドの両方になじむ前提条件です。
ステップ4:はんだ供給
こてを当てたまま、糸はんだを「部品リードとランドの境目」に押し当てます。こて先ではなく、温まった母材に直接当てるのがポイントです。融点を超えた瞬間に溶けて流れ込み、フラックスの白い煙が一瞬上がります。はんだ量は接合部の体積の1.5倍程度(0.5〜1.5mm分の糸)で十分です。
ステップ5:冷却
糸はんだを離してから0.5秒ほど待ち、その後こてを「ランドに沿わせて斜め上に」スッと引き上げます。引き上げた後は動かさず、2〜3秒そのままの姿勢で冷却します。冷却中に基板や部品を動かすと「冷えはんだ」になり、見た目は付いているのに導通が悪い不良になります。
仕上がりは富士山形(なだらかな円錐)で表面が銀色に光っているのが正解。ボール状に盛り上がっている、白く曇っている、ツノが立っている場合は次章のコツに戻って原因を切り分けます。
電子部品のはんだ付けのコツ
抵抗・ダイオード・コンデンサなど、リード線のついた電子部品は「熱に弱い」「リードが細い」という特徴があり、基板へのはんだ付けとは別のコツが必要です。
コツ1:リードの折り曲げと固定
部品を基板に挿したら、リードを基板の裏側で30〜45度に軽く折り曲げて仮固定します。垂直のままだと、はんだ付け中に部品が浮いてしまい、ランドと部品の間に隙間ができてイモはんだの原因になります。
コツ2:熱に弱い部品は3秒以内
ダイオード・トランジスタ・IC・電解コンデンサは内部素子が熱で劣化します。1点あたりの加熱時間は3秒以内を厳守し、失敗したら一度冷却してからやり直します。連続加熱は故障の原因です。ICの場合はピンセットで足を挟んで放熱しながら付けると安全です。
コツ3:リード切断は冷却後
はんだ付け後、ニッパーで余ったリードを切るタイミングは冷却が完全に終わってから(10秒以上後)です。冷却中に切ると振動でクラック(微細な割れ)が入り、後から導通不良を起こします。切断面は1〜1.5mm残し、長すぎず短すぎずが基本です。
基板へのはんだ付けのコツ|スルーホールと表面実装
基板へのはんだ付けは「スルーホール実装(穴に挿す)」と「表面実装(SMT)」で手順が大きく違います。手はんだで扱うのは主にスルーホールと、表面実装の補修・試作です。
スルーホール実装のコツ
スルーホールは基板に空いた穴の壁(金属メッキ)も含めて接合する方式です。こてを部品リードと穴の縁(ランド)の両方に同時接触させ、糸はんだを反対側から供給します。スルーホール内にもはんだが吸い込まれて充填されるため、両面接続が確実になります。穴の中まで届かない場合は、こての当て方が甘く予熱不足のサインです。
表面実装(SMT)部品のコツ
表面実装は基板の表面のランド(パッド)に部品を直接乗せて接合する方式です。手作業では「片足はんだ仮固定→残りの足を本付け→最初の足を再加熱仕上げ」の3工程で行います。チップ抵抗(1608・2012サイズ)なら、ピンセットで部品を押さえながら片足だけ先にはんだで止め、位置を微調整してから残りを付けると、ズレずに仕上がります。
はんだ吸取線の使い方
付けすぎたはんだ・修正したい接合は、はんだ吸取線(銅編線)を当てた上からこてで加熱すると、毛細管現象で余分なはんだが吸取線に吸い込まれます。吸い終わったら銅編線をニッパーで切り、再度予熱して付け直します。これで「やり直し」がきくため、初心者ほど吸取線は必携です。
はんだ付けの失敗例|イモはんだ・冷えはんだの原因
はんだ付け不良はほぼ5パターンに分類できます。仕上がりを見るだけで原因が特定できるので、覚えておくとリカバリーが速くなります。
| 失敗の名前 | 見た目の特徴 | 主な原因 |
|---|---|---|
| イモはんだ | ボール状に盛り上がる・部品となじまない | 予熱不足・こて先酸化・予備はんだなし |
| 冷えはんだ | 表面が白く曇る・梨地になる | 冷却中の振動・温度不足・はんだ量過多 |
| てんぷらはんだ | 外側だけ付いて中が未接合 | こて温度高すぎ・接触時間不足 |
| はんだブリッジ | 隣のランドとつながる | はんだ量過多・パッド間隔狭い |
| ピンホール | 表面に小さな穴・凹みがある | フラックス不足・湿気・部品の汚れ |
本田健一が現場で見た一番多い失敗は、新人さんの「こて先にはんだを当てて、こて先で運ぶようにつける」パターンです。これだとフラックスが先に飛んでしまい、母材になじまずほぼ確実にイモはんだ。最初の1週間でほぼ全員がこの癖を直すところからスタートします。
もう1つ多いのが、ライン作業で「冷えるのを待たずに次の工程に基板を渡してしまう」失敗。製品検査で導通不良として弾かれ、後工程で気づくと修正コストが10倍以上になるため、教育時に「3秒数える」を口酸っぱく言われます。
はんだ付けに必要な道具
はんだ付けを始めるなら、最初に揃える道具は5点です。合計1万〜2万円で一式が揃い、家庭学習にも仕事用の練習にも十分です。
はんだごて(温調式)
温度調節機能付きのこて(温調はんだごて)を選ぶのが必須です。固定温度のこて(20〜30W)は安価ですが、温度が上がりすぎて部品を壊しやすく、初心者ほど温調式の方が失敗が減ります。HAKKO FX-600、白光FX-888Dなどが定番で、5,000〜15,000円です。
糸はんだ
初心者は鉛入りはんだ(Sn63/Pb37、線径0.6〜0.8mm、ヤニ入り)から始めるのがおすすめです。融点が低くなじみが良いため成功率が上がります。慣れたら仕事用に合わせて鉛フリーへ移行します。1巻(100g)で1,000〜2,000円です。
フラックス
糸はんだの内部にヤニ(フラックス)は入っていますが、表面実装の修正や難接合のときは追いフラックスが必要です。液体フラックス(ペンタイプ)1本で500〜1,500円。塗ってからはんだ付けすると、ぬれ性が劇的に良くなります。
はんだ吸取線(銅編線)
修正・やり直し用に必須の道具です。幅2.0〜2.5mmの吸取線を選べば、ほとんどの修正に対応できます。1巻(1.5m)で500〜1,000円。これがないと付けすぎたはんだを除去できず、修正のたびに部品を破損します。
こて台とこて先クリーナー
こて台(スタンド)とこて先クリーナー(湿スポンジ+銅たわし両方付き)が安全と仕上がりの両方を支えます。銅たわしクリーナーは予備はんだを残したまま掃除できるため、湿スポンジだけより仕上がりが安定します。セットで2,000〜4,000円です。
はんだ付けの仕事と年収|電子部品工場の実態
はんだ付けは仕事として、電子部品工場・電気機械製造業・基板組立メーカー・自動車部品工場(車載基板)で常に需要があります。求人票では「電子部品組立」「基板実装」「ライン作業(はんだ付け工程)」として募集されることが多い職種です。
| キャリア段階 | 年収目安 | 仕事内容 |
|---|---|---|
| 未経験(0〜1年) | 290万〜340万円 | ライン作業・指示通りの単純はんだ付け |
| 中堅(2〜5年) | 340万〜420万円 | 多品種対応・検査工程・新人教育 |
| 熟練(5年以上) | 420万〜520万円 | 試作・補修・難難接合・リワーク担当 |
| マイスター級 | 520万〜650万円 | JIS Z 3801相当の資格+鉛フリー対応指導 |
はんだ付けの現場はクリーンルーム(防塵環境)で行うケースが多く、空調が効いて夏冬とも快適です。ただし防塵服・手袋の制約があるため、最初は窮屈に感じる人もいます。クリーンルーム勤務の実態はクリーンルーム作業はしんどい?でまとめています。
キャリアアップを目指すならJIS Z 3801(マイクロソルダリング技術者資格)を取ると手当が月1万〜2万円付くため、長く続けるなら早めの取得がお得です。製造業の主要資格は製造業の資格一覧でまとめています。
経験者から見たはんだ付け現場|本田健一の体験
本田健一が電子部品工場のライン応援に入っていた時期、最初に驚いたのは熟練者の作業速度でした。1点あたり3秒、休まず連続で200点付けても全て富士山形ビードに揃う様子は職人技そのもので、新人とは別次元の精度でした。
逆に印象に残っているのは、入社2週間目の若い同僚が「こて先が黒くなったまま使い続けて、不良率20%を出してしまった」失敗です。原因は単純で、こて先掃除を1時間サボっただけ。クリーナーで30秒掃除して予備はんだをのせ直したら、次のロットからは不良率1%以下に戻りました。はんだ付けは結局「こて先のメンテナンス命」、と現場の先輩がよく言っていた意味を、その日に身体で覚えました。
もう1つの体験は、補修部門のベテランが「失敗を100回しないと、コツは身につかない」と笑いながら言っていたこと。実際に練習用基板で100点ほどやり直すと、こて当てる位置・はんだを離す瞬間・冷却の数秒が自然に身体に染みつきます。最初の1週間は誰でも下手で当たり前、と思って練習量を稼ぐのが上達の近道です。
まとめ|はんだ付けは「3ステップ×100回練習」で身につく
はんだ付けのやり方は「予熱→はんだ供給→冷却」の3ステップ、各1〜2秒を正確に守るだけで初心者でもきれいに仕上がります。ポイントを再掲します。
- こて先温度340〜360℃、予備はんだを常にのせた銀色のこて先を保つ
- はんだはこて先ではなく「部品とランドの境目」に当てて溶かす
- 冷却中(2〜3秒)は基板を動かさない。これで冷えはんだは消える
- 失敗時はいったん吸取線で除去し、再加熱してやり直す。100回練習が上達の最短ルート
- 仕事として目指すなら、未経験でも電子部品工場のライン作業から入って、JIS Z 3801取得で年収アップが王道
はんだ付けは「資格より練習量」の世界で、未経験から3〜6カ月でひと通り任せてもらえるようになります。仕事として始めたい人は未経験OKの工場求人一覧で電子部品組立・はんだ付け工程の求人を確認してみてください。
はんだ付けに関するよくある質問(FAQ)
Q1. はんだ付けのこて先温度は何度が正解ですか?
A. 鉛入りはんだ(Sn63/Pb37)なら320〜340℃、鉛フリーはんだ(Sn-Ag-Cu)なら340〜360℃が標準です。温度が低いとイモはんだ、高すぎるとてんぷらはんだや部品破損になります。温調式はんだごてを使い、設定温度を守るだけで失敗の半分は防げます。
Q2. イモはんだの直し方を教えてください。
A. はんだ吸取線(銅編線)を当てて、上からこてで加熱して余分なはんだを吸い取ります。その後、こて先を掃除して予備はんだをのせ直し、フラックスを軽く塗ってから再度予熱→供給→冷却の3ステップでやり直します。原因は予熱不足とこて先酸化が9割なので、こて先掃除を徹底するのが根本対策です。
Q3. はんだ付けは未経験でも仕事にできますか?
A. できます。電子部品工場・基板組立メーカーの求人の多くが「未経験歓迎・研修あり」で募集しており、入社後1〜2週間の研修で基本動作を習得します。最初の3〜6カ月はライン応援で単純作業から始め、徐々に多品種対応・補修工程へとステップアップしていくのが一般的なキャリアです。
Q4. 鉛入りはんだと鉛フリーはんだはどちらを使うべきですか?
A. 練習・電子工作・自分用補修なら、融点が低くなじみの良い鉛入りはんだ(Sn63/Pb37)がおすすめです。仕事用・販売する製品・RoHS対応が必要な場合は鉛フリーはんだ(Sn-Ag-Cu)が必須です。鉛フリーは融点が30〜40℃高く難易度が上がるので、まず鉛入りで3ステップを体得してから移行すると上達が早いです。
Q5. はんだ付けで一番大切なコツは何ですか?
A. 「こて先のメンテナンス」です。こて先が酸化して黒くなると熱伝導が極端に悪くなり、どれだけ予熱しても母材が温まらず、ほぼ確実にイモはんだになります。湿スポンジで拭く→銅たわしで磨く→予備はんだを少量のせる、を5〜10分おきに行うだけで、仕上がりが劇的に安定します。本田健一の現場でも、不良率の高い人はほぼ全員がこて先掃除の頻度が低い人でした。
