バリ取りとは、金属やプラスチックを加工したときに縁にできる細かい出っ張りを取り除く作業です。「バリ」は加工の過程でどうしても発生するもので、そのままにすると手を切る危険があり、部品同士が正しく組み合わさりません。工場ではライン工程のひとつとして必ず入っています。
結論:バリ取りは未経験から始めやすい仕事です。時給は1,150〜1,500円が中心で、研磨の工程まで任されるようになると1,600円以上も見えてきます。ただし研削といしを使う作業には法律で定められた特別教育の受講が必要で、これを受けているかどうかが待遇の分かれ目になります。
この記事を書いている本田健一は、製造業7社・15年の現場経験者です。金属部品のバリ取りと研磨を担当した経験から、求人票では分からない作業の中身をお伝えします。
研磨・バリ取りの求人から先に見たい方は研磨の工場求人一覧をご覧ください。
バリとは何か|加工でできる不要な出っ張り
バリとは、切断・穴あけ・プレス・鋳造などの加工をしたときに、材料の縁に残る細かい突起のことです。現場ではカタカナで「バリ」と呼び、英語では burr(バー)と表記します。
バリが残っていると、次の問題が起きます。
- 作業者や使用者が手を切る:金属のバリは紙より鋭く、軍手を貫通することがある
- 部品が正しく組み付かない:0.1ミリの出っ張りで寸法が狂う
- 塗装やめっきが乗らない:縁に膜が付かず、そこから錆びる
- 機械のなかで脱落して故障を招く:金属片が可動部に入る
バリ取りは見た目を整える作業ではなく、製品の安全性と精度を確保する工程です。だからこそ、どの工場にも必ず存在します。
バリができる主な加工
| 加工の種類 | バリの出方 | 取りやすさ |
|---|---|---|
| 切削(旋盤・フライス) | 刃が抜ける側にめくれる | 取りやすい |
| プレス(打ち抜き) | 打ち抜いた裏側に出る | 取りやすい |
| 鋳造 | 型の合わせ目に沿って出る | 硬く量も多い |
| ダイカスト | 薄い膜状に広がる | 面積が広く手間がかかる |
| 樹脂成形 | ゲート跡と型合わせ部に出る | 柔らかく取りやすい |
| 溶接 | ビード周りにスパッタが飛ぶ | 硬く工具が要る |
鋳造とダイカストのバリはとくに量が多く、専任の担当者を置く工場もあります。鋳物工場の仕事の全体像は鋳物工場の仕事内容・年収・きつさで解説しています。
バリ取りと研磨の違い
求人票では「バリ取り・研磨」とまとめて書かれることが多いのですが、目的が違う作業です。
| 項目 | バリ取り | 研磨 |
|---|---|---|
| 目的 | 不要な突起を除去する | 表面を滑らかに仕上げる |
| 対象 | 縁や穴の周りなど一部 | 面全体 |
| ゴール | 触って引っかからないこと | 指定された面粗さに入ること |
| 判定 | 手の感触と目視が中心 | 粗さ計や見本との比較 |
| 難易度 | 初日から任される | 数か月かけて習得する |
| 時給の目安 | 1,150〜1,400円 | 1,300〜1,800円 |
順番としては、バリ取りをしてから研磨に進みます。バリが残ったまま研磨すると、突起が引っかかって研磨材が傷むためです。工場によっては同じ人が両方を担当します。
バリ取りの5つの方法
バリの取り方は、材質・形状・数量で決まります。工場でよく使われる方法を、作業者の目線で整理します。
1. 手作業(ヤスリ・スクレーパー・ペーパー)
もっとも基本的な方法です。ヤスリやナイフ状のスクレーパー、紙やすりを使って一つずつ落とします。少量生産や、機械が入らない複雑な形状の部品で使われます。
未経験で入るとまずここを任されます。特別な資格は不要で、初日から作業に入れます。ただし手首と指先を使い続けるため、慣れるまでは腱鞘炎に注意が必要です。
2. 電動工具(リューター・ベルトサンダー・グラインダー)
回転する工具でバリを削り落とします。手作業より圧倒的に速く、硬い金属のバリにも対応できます。
ここから先は法律で定められた特別教育が必要になります。研削といしの取替えや試運転の業務は、労働安全衛生法にもとづく特別教育を修了した人でなければ行えません(出典:厚生労働省「安全衛生教育の推進について」)。多くの工場では入社後に会社負担で受講させてくれます。
3. バレル研磨(回転槽で一括処理)
部品と研磨石、水、薬品を樽状の容器に入れて回転させます。何百個をまとめて処理できるため、小物の大量生産で使われます。
作業者が担当するのは、部品の投入と取り出し、研磨石の補充です。仕上がりの確認も担当します。削る作業そのものより、条件の管理と検品が中心になります。
4. ショットブラスト(粒を吹き付ける)
細かい粒を高速で吹き付け、表面のバリや汚れを飛ばします。鋳物の砂落としと同時に行われることが多い方法です。
装置のなかで処理するため直接粉塵を浴びることはありませんが、扉を開けたときの粉じん対策としてマスクの着用が求められます。
5. 熱処理・電解(薬品や熱で溶かす)
爆発的な燃焼や電気分解でバリだけを選択的に除去します。設備が大がかりなので、大手メーカーの専用ラインに限られます。作業者は装置の操作と品質確認を担当します。
| 方法 | 向く数量 | 必要な教育 | 体への負担 |
|---|---|---|---|
| 手作業 | 少量・複雑形状 | 不要 | 手首・指先 |
| 電動工具 | 中量・硬い材料 | 特別教育が必要 | 振動・粉じん・騒音 |
| バレル研磨 | 大量・小物 | 不要 | 運搬時の重量物 |
| ショットブラスト | 大量・鋳物 | 装置により異なる | 粉じん・騒音 |
| 熱処理・電解 | 大量・精密 | 装置により異なる | 少ない |
研磨の種類
研磨は仕上がりの精度によって呼び方が変わります。求人票に書かれる用語を押さえておくと、応募先の作業内容が読めます。
| 種類 | やること | 仕上がり |
|---|---|---|
| 研削 | といしで削って寸法を出す | 寸法精度を確保する |
| ベルト研磨 | 研磨ベルトで面を整える | 下地をつくる |
| バフ研磨 | 布バフと研磨剤で磨く | 光沢が出る |
| ラッピング | 研磨剤をはさんで擦り合わせる | 非常に平滑になる |
| 鏡面仕上げ | 段階的に番手を上げて磨く | 鏡のように映る |
求人票に「鏡面仕上げ」と書かれていれば、経験者向けの募集だと考えて間違いありません。番手の上げ方や力加減で仕上がりが変わるため、習得に年単位かかります。金属加工の職種全体は工場の加工の仕事とは?種類・給料・きつさで比較できます。
バリ取り・研磨の仕事内容と1日の流れ
実際の勤務がどう進むかを、金属部品工場の日勤を例に並べます。
| 時刻 | やること |
|---|---|
| 8:00 | 朝礼・作業指示の確認・保護具の点検 |
| 8:15 | 前工程から届いた部品の数量確認 |
| 8:30 | バリ取り開始。工具を持ち替えながら進める |
| 10:00 | 10分休憩 |
| 12:00 | 昼休憩。ここまでの出来高を記録する |
| 12:45 | 午後の作業。研磨工程に入る日もある |
| 15:00 | 10分休憩 |
| 16:30 | 仕上がりの自主検査・次工程へ受け渡し |
| 16:50 | 工具と作業台の清掃・研磨材の在庫確認 |
| 17:00 | 終業 |
座り作業の求人と立ち作業の求人があり、体への負担がまったく違います。小物のバリ取りは椅子に座ってできることが多く、大物や機械を使う工程は立ちっぱなしになります。応募前に確認しておくと入社後のギャップが減ります。
使う道具と保護具
- 工具:ヤスリ、スクレーパー、リューター、エアグラインダー、ベルトサンダー
- 保護具:保護メガネ、防じんマスク、耳栓、革手袋、腕カバー
- 測定具:ノギス、面粗さの見本、拡大鏡
保護メガネと耳栓は必須です。研削の火花は目に入ると角膜を傷つけますし、グラインダーの音は長時間浴びると聴力に影響します。騒音への対策は工場の騒音対策|耳栓と健康影響にまとめています。
時給・年収の相場
担当する範囲と資格の有無で待遇が変わります。
| 段階 | 時給の目安 | 年収の目安 | 担当範囲 |
|---|---|---|---|
| 未経験・手作業のみ | 1,150〜1,350円 | 240〜280万円 | ヤスリ・ペーパーでのバリ取り |
| 電動工具を使える | 1,300〜1,550円 | 270〜320万円 | リューター・グラインダー作業 |
| 研磨まで担当 | 1,450〜1,800円 | 300〜370万円 | 面粗さの管理・仕上げ |
| 鏡面・精密研磨 | 1,700〜2,200円 | 350〜450万円 | 高精度部品・金型の仕上げ |
金額は日勤・残業なしで計算した目安です。二交替に入れば深夜割増が付くため、同じ工程でも月2〜4万円上乗せされます。時給を上げる最短の道は、特別教育を受けて電動工具の作業に入れるようになることです。会社負担で受けられることが多く、数日で終わります。
製造業全体の給与水準と比べたい方は製造業の平均年収|年代・業種・地域別をご覧ください。
バリ取り・研磨のきついところ
粉じんと火花が出る
電動工具を使うと金属の粉が舞い、研削では火花が飛びます。防じんマスクと保護メガネで防げますが、夏場はマスクの中が蒸れて息苦しくなります。作業服に穴が空くことも珍しくないので、支給品の枚数を確認しておいてください。
音と振動が体にくる
グラインダーの回転音は近くで聞くと会話ができない水準です。耳栓は必須で、長時間の使用では手のしびれ(振動障害)にも注意が要ります。振動工具の1日の使用時間には上限の目安が定められており、守っている工場を選ぶのが安全です。
同じ動作が続く
数百個を同じやり方で処理するため、単調に感じる人には向きません。逆に、黙々と手を動かすほうが集中できる人には合っています。
手が荒れる
金属粉と切削油に触れ続けると、手指の皮膚が荒れます。革手袋の下に薄手のインナー手袋を重ねると軽減できます。
向いている人・向いていない人
| 向いている | 向いていない | |
|---|---|---|
| 作業のしかた | 手先を使う細かい作業が苦にならない | 同じ動作の繰り返しが苦痛 |
| 性格 | ひとりで黙々と進めたい | 人と話しながら働きたい |
| こだわり | 仕上がりの差が気になる | 細かい違いに関心がない |
| 体質 | 粉じんやにおいに強い | ぜんそくや金属アレルギーがある |
| 働き方 | 成果が目に見えるほうが張り合いがある | チームで動くほうが好き |
ぜんそくや金属アレルギーがある方は、応募前に必ず伝えてください。粉じんの少ないバレル研磨の工程に配属してもらえる場合があります。黙々とできる仕事の選び方は製造業に向いている人の特徴7選も参考になります。
キャリアの伸ばし方
バリ取りから入って、どう待遇を上げていくかの道筋です。
- 特別教育を受ける:研削といしの業務に入れるようになる。会社負担が多く数日で完了
- 研磨工程を覚える:番手の使い分けと面粗さの判断ができると時給が上がる
- 測定を身につける:ノギスや粗さ計を扱えると検査工程も任される
- 関連資格を取る:機械加工技能士、金属材料の知識で選択肢が広がる
- 金型・精密部品に移る:単価の高い分野へ。年収400万円台が見えてくる
製造業で取っておくと効く資格は製造業の資格一覧20選|年収アップ効果にまとめています。関連工程のプレスについてはプレス機の仕事内容|危険性と年収、金属製品の業界全体は金属製品製造業の仕事内容|加工方法別の職種・年収・資格をご覧ください。
経験者として見てきたこと
私が金属部品のバリ取りに配属されたときは、初日から普通のヤスリを渡されました。3日目には手首が痛くなり、先輩に持ち方を直されて楽になっています。力で削るのではなく、工具の重さと角度で削るのがコツでした。
2か月後に特別教育を受けてリューターを使えるようになると、処理量が3倍近くになり、時給も100円上がりました。手作業のままだと待遇が頭打ちになるので、電動工具を扱えるかどうかが最初の分かれ道だと感じています。
まとめ|バリ取りは未経験の入口、研磨は伸ばす先
- バリ取りは加工でできた突起を除去する工程で、安全性と寸法精度を守るために必ず行われる
- 研磨は面全体を滑らかに仕上げる作業で、バリ取りより習得に時間がかかり単価も高い
- 方法は手作業・電動工具・バレル・ショットブラスト・熱処理の5種類
- 電動工具で研削といしを扱うには労働安全衛生法の特別教育が必要。会社負担で受けられることが多い
- 時給は未経験1,150円台から、精密研磨まで進めば2,000円超も視野に入る
- 粉じん・騒音・振動が伴うので、保護具の支給と使用時間の管理がある職場を選ぶ
未経験から入って、特別教育と研磨の技能を積み上げていける仕事です。手を動かして仕上がりが目に見える働き方が合う方に向いています。
よくある質問(FAQ)
Q. バリ取りは未経験でもできますか?
できます。手作業のバリ取りは資格が不要で、初日から作業に入れる職場がほとんどです。ヤスリの持ち方や力の入れ方は現場で教わります。
Q. バリ取りと研磨は何が違いますか?
バリ取りは縁にできた不要な突起を取り除く作業で、研磨は面全体を滑らかに仕上げる作業です。順番としてはバリ取りが先で、バリが残ったまま研磨すると研磨材が傷みます。
Q. バリ取りに資格は必要ですか?
手作業なら不要です。ただし研削といしを使う電動工具の作業には、労働安全衛生法にもとづく特別教育の修了が必要です。多くの工場では入社後に会社負担で受講できます。
Q. バリ取りの時給はいくらですか?
未経験の手作業で1,150〜1,350円が中心です。電動工具を使えるようになると1,300〜1,550円、研磨まで担当すると1,450〜1,800円が目安になります。
Q. バリ取りはきついですか?
粉じん・騒音・振動があり、同じ動作が続きます。一方で座って作業できる求人もあり、体力面の負担は工程によって大きく違います。応募前に立ち作業か座り作業かを確認してください。
Q. 女性でもバリ取りの仕事はできますか?
できます。小物のバリ取りは座り作業で力もあまり使わないため、女性が多く働いている職場もあります。重量物の運搬がある工程かどうかは求人票で確認してください。
Q. バリ取りから研磨に進むにはどうすればいいですか?
まず特別教育を受けて電動工具を扱えるようにし、そのうえで番手の使い分けと面粗さの判断を覚えます。工場によっては社内の技能認定があり、合格すると研磨工程に配属されます。
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