工事担任者の難易度|試験と年収を経験者解説【2026】

工事担任者の難易度の要点を図解したアイキャッチ画像

オフィスのLAN配線から工場内ネットワーク、IP電話・PBXの設置まで、事業者の電気通信回線と利用者側設備をつなぐ工事には「工事担任者」の国家資格が法律で必須です。電気通信事業法に基づく業務独占資格で、第二級デジタル通信・第一級デジタル通信・総合通信の3区分があり、合格率は25〜40%前後。製造業のスマートファクトリー化が進むなかで、PLC・センサー・産業用IoT機器のネットワーク配線を担う人材として、現場での評価が高まっている資格です。

この記事では、工場勤務15年で社内ネットワーク改修や電気通信工事の立ち会いに携わった本田健一が、工事担任者の試験内容・難易度・合格率・勉強時間・年収・製造業での活用シーン・キャリアパスまでを実体験を交えて解説します。

目次

工事担任者の結論|押さえたい3つのポイント

結論を先に伝えます。工事担任者の取得を検討するうえで、最初に押さえておきたい要点は次の3つです。

  • 工事担任者は電気通信事業法に基づく業務独占の国家資格で、利用者側の電気通信設備(LAN・IP電話・PBX等)の工事・監督に必須
  • 区分は第二級デジタル通信・第一級デジタル通信・総合通信の3つ。合格率は40%→30%→25%とステップアップに応じて下がり、勉強時間目安は60〜150時間
  • 転職市場の年収相場は400万〜600万円。資格手当月3,000〜2万円、製造業ではスマートファクトリー化に伴い電気工事士との併有が評価される

製造業のキャリアアップ資格として並行検討するなら、製造業で評価される資格一覧もあわせて確認しておくと、自分の現状に合う資格選定がしやすくなります。

工事担任者とは|電気通信回線を扱う国家資格

工事担任者とは、電気通信事業法第71条に基づき、利用者の電気通信設備を事業者の回線(NTT等)に接続する工事を行い、または監督するための国家資格です。総務省所管で、一般財団法人日本データ通信協会の電気通信国家試験センターが試験を実施しています。

なぜ法律で資格が必須とされているのか

電気通信回線は、施工不良によって通信品質の低下・通信障害・他利用者への影響を引き起こすため、無資格者による接続工事を法律で禁止し、専門知識を持つ有資格者だけが工事・監督できる構造にすることで、回線網全体の品質を担保しています。本田が在籍していた化学工場でも、社内LANの引き直しやIP電話の増設は、必ず工事担任者の有資格者が立ち会って施工していました。

工事担任者と電気工事士の違い

名称が似ているため混同されやすいですが、電気工事士は「電力」、工事担任者は「電気通信」を扱う別資格です。コンセント・配線・受電設備は電気工事士、LAN・電話・光ファイバの接続工事は工事担任者の領分で、工場保全の現場では両方の有資格者が分担して施工することが一般的です。

3区分の違い|第二級デジタル通信/第一級デジタル通信/総合通信

2021年4月の規則改正以降、工事担任者の区分は3つに整理されました。違いを表にまとめます。

区分 扱える範囲 主な現場 合格率(目安)
第二級デジタル通信 デジタル回線・1Gbps以下のインターネット接続工事(端末数50以下) 家庭・小規模オフィス・店舗 約40%
第一級デジタル通信 デジタル回線全般(端末数・帯域の制限なし)、光回線・企業ネットワーク 中〜大規模オフィス・工場LAN・データセンター 約30%
総合通信 デジタル+アナログ(PBX・ビジネスホン等)すべての電気通信工事 大規模プラント・PBX保守・通信工事会社 約25%

小規模な光回線工事までなら第二級デジタル通信で対応可能ですが、工場全体のネットワーク改修やPBX保守までカバーするなら総合通信が必要です。本田の工場では、まず第二級デジタル通信から取り、3〜5年目で第一級デジタル通信、最終的に総合通信へとステップアップする若手が多くいました。

受験資格|年齢・学歴・実務経験は不要

工事担任者は、3区分すべて受験資格に年齢・学歴・実務経験の制限がありません。中学生でも受験可能で、合格すれば資格者証の交付申請ができます。電気工事士第一種のような「免状交付に実務経験◯年」といった条件もないため、合格=即免許取得が可能です。

このため、工業高校・専門学校の在学中に取得して就職活動の武器にするケースも多く、本田の同僚にも入社1年目で第二級デジタル通信を取得し、社内ネットワーク改修プロジェクトに抜擢された若手がいました。

難易度・合格率|上位区分ほど学科の科目数が増える

工事担任者試験は、「電気通信技術の基礎」「端末設備の接続のための技術及び理論」「端末設備の接続に関する法規」の3科目で構成され、すべて筆記(CBT方式)で実技試験はありません。各科目100点満点中60点以上で合格、科目合格制で3年間有効です。

区分別の難易度感

  • 第二級デジタル通信(合格率40%前後):基礎レベル。電気・電子の基本知識と簡単な接続技術が中心で、勉強時間60〜80時間が目安
  • 第一級デジタル通信(合格率30%前後):光ファイバ・IPネットワーク・伝送理論まで踏み込み、勉強時間100〜120時間が目安
  • 総合通信(合格率25%前後):アナログ・PBX・トラヒック理論まで含む最上位。勉強時間120〜150時間が目安

国家資格全体で見れば、第二級デジタル通信は「比較的取りやすい入門レベル」、総合通信は「電気通信主任技術者の手前のステップ」と評価されます。第三種電気主任技術者(電験三種)と比べると総合通信のほうが取得しやすい難易度ですが、出題範囲は通信特有の理論で異なります。

試験範囲|3科目の具体的な出題内容

3科目それぞれの主な出題範囲は次のとおりです。区分が上がるほど深掘り度合いが増します。

電気通信技術の基礎

電気回路・電子回路の基礎、論理回路、伝送理論、変調・復調、デジタル通信の基本原理、半導体素子。第二級は中学〜高校理系レベルですが、総合通信ではフーリエ変換やトラヒック理論まで踏み込みます。

端末設備の接続のための技術及び理論

端末設備の概要、LAN・光ファイバ・メタル回線の接続方式、IPネットワーク、PBX・ビジネスホン、セキュリティ、施工管理、施工試験。実務に直結する科目で、現場経験者ほど点数を稼ぎやすい領域です。

端末設備の接続に関する法規

電気通信事業法、有線電気通信法、不正アクセス禁止法、電子署名法、端末設備等規則。条文の暗記要素が強く、過去問の反復学習が効果的です。

年収・資格手当|400万〜600万円帯が中心

厚生労働省の賃金構造基本統計調査および求人サイトの実勢から、工事担任者の年収相場は400万〜600万円です。区分別の目安は次のとおりです。

区分 年収目安 資格手当(月) 主な就職先
第二級デジタル通信 350万〜450万円 3,000〜5,000円 電気通信工事店・住宅光回線工事
第一級デジタル通信 400万〜550万円 5,000〜1万円 通信工事会社・工場保全・SIer施工部門
総合通信 500万〜650万円 1万〜2万円 大手通信工事・PBX保守・データセンター

製造業の保全部門に在籍する場合、電気工事士・電験三種・工事担任者を併有することで「電気と通信の両方を一人で完結できる人材」として処遇が上がりやすく、本田の工場でも3資格保有者は基本給ベースで月3〜5万円の差が付いていました。

製造業との関連|スマートファクトリー化で需要が拡大

「工事担任者は通信業界の資格」というイメージがあるかもしれませんが、製造業の現場でも近年急速に評価が高まっているのが実情です。理由は次の3つです。

  • スマートファクトリー化:PLC・センサー・産業用IoT機器を社内ネットワークに接続する工事が日常化し、工事担任者の有資格者が現場に常駐するメリットが増大
  • IP-PBX化の波:従来のアナログPBXからIP電話への切り替えで、工場内通信網の再構築工事が頻発
  • セキュリティ強化:制御系ネットワーク(OT)と情報系ネットワーク(IT)の分離・接続工事に有資格者の関与が求められる

製造業の保全・電気主任部門に転職する場合、電気工事士+工事担任者の併有は強力な差別化要素になります。製造業の求人を確認するなら関東エリアの製造業求人一覧もチェックしておくと、資格手当の相場感がつかみやすくなります。

経験者の話|本田が現場で見た工事担任者の使いどころ

本田自身は工事担任者の資格は持っていませんが、化学工場の保全課に15年在籍するなかで、社内ネットワーク改修プロジェクトに何度も立ち会いました。当時、保全課の主任が第一級デジタル通信を持っており、外注業者との打ち合わせで「この配線ルートだとノイズが乗る」「ハブの設置場所を変えたほうがいい」と即決できる場面を何度も見てきました

無資格者だと、外注業者の提案を鵜呑みにするか、毎回上司に確認を取るしかなく、現場の意思決定スピードが大きく変わります。とくに夜間の通信障害対応では、有資格者が現場にいるかどうかでダウンタイムが数時間単位で変わるため、工場側が「自社で1人は欲しい」と考えるのは自然な流れです。

20代後半〜30代前半で第一級デジタル通信や総合通信まで取った人は、保全課のリーダーや、グループ会社の情報システム部門への異動など、キャリアの選択肢が一気に広がっていました。

まとめ|製造業でも価値が上がる「通信の国家資格」

工事担任者は、電気通信事業法に基づく業務独占の国家資格で、利用者側の通信設備工事には必須の存在です。第二級デジタル通信は合格率40%・勉強時間60〜80時間で取得可能な入門資格、第一級デジタル通信・総合通信はステップアップ資格として位置付けられます。

製造業のスマートファクトリー化により、通信業界だけでなく工場保全部門でも需要が拡大しており、電気工事士や電験三種との併有でキャリアの幅が大きく広がります。年収400万〜600万円の安定した相場と、月3,000〜2万円の資格手当を考えれば、製造業キャリアの「次の一手」として十分検討する価値のある資格です。

関連資格として、電気工事士第三種電気主任技術者(電験三種)製造業で評価される資格一覧もあわせて確認し、自分のキャリアパスに合う資格を選定してください。

FAQ|工事担任者についてよくある質問

Q1. 工事担任者は独学で合格できますか?

はい、3区分とも独学で合格可能です。市販テキスト1冊と過去問5年分を反復学習するのが王道で、第二級デジタル通信なら60〜80時間、総合通信でも120〜150時間で合格圏に届きます。電気・電子の基礎知識がない初学者は、まず第二級デジタル通信から段階的に進めるのがおすすめです。

Q2. 工事担任者と電気通信主任技術者はどちらが難しいですか?

電気通信主任技術者のほうが上位資格で、合格率は20%前後・勉強時間200〜300時間が目安です。工事担任者は「工事の実施」を担う資格、電気通信主任技術者は「設備の監督」を担う資格で、キャリアパスとしては工事担任者(総合通信)→電気通信主任技術者へ進むのが一般的なルートです。

Q3. 工事担任者の試験は年に何回ありますか?

2021年度からCBT方式が導入され、現在は随時受験可能なCBT試験と、年2回(5月・11月)の従来型筆記試験が併用されています。CBTは自分の都合に合わせて受験日を選べるため、社会人の取得が大幅に楽になりました。

Q4. 文系出身でも合格できますか?

合格可能です。電気通信技術の基礎は高校理系レベルの内容を含みますが、市販テキストがやさしく解説しており、文系出身者の合格報告も多数あります。第二級デジタル通信から始めれば、基礎理論に慣れながらステップアップできます。

Q5. 工事担任者を取得したら独立できますか?

総合通信を取得し、5〜10年の実務経験を積めば、電気通信工事業として独立する道があります。ただし、独立には建設業許可(電気通信工事業)の取得や、営業基盤の構築が必要で、まずは通信工事会社で現場経験を積むのが現実的です。製造業の保全部門で経験を積み、副業的に小規模工事を請ける形でスタートするケースもあります。

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この記事を書いた人

工場勤務歴15年。愛知県の自動車部品工場でライン作業・検品・溶接・フォークリフトを経験。20代で住み込み寮生活を3年間送り、カップル寮も経験。班長として後輩指導も担当。35歳で製造業から転身し、現在は工場勤務の経験を活かしてライターとして活動中。

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