資格取得支援制度とは、会社が資格の受験料や講習費を負担してくれる仕組みです。費用の補助だけでなく、合格したときの報奨金や、勤務時間内に講習を受けさせてくれる形もあります。工場では作業に直結する資格が多いため、導入している会社が少なくありません。
結論:工場で資格を取るなら、自費で取るより会社の支援を使うほうが圧倒的に得です。フォークリフトの講習は自費だと2〜5万円かかりますが、会社負担なら0円で、しかも受講日が勤務扱いになることがあります。時給が50〜200円上がるので、取得した翌月から差が出ます。ただし「一定期間内に辞めたら返還」という条件が付く場合があるため、金額と期間を先に確認してください。
この記事を書いている本田健一は、製造業7社・15年の現場経験者です。会社の支援でフォークリフトと玉掛けを取得した経験から、制度の使い方をお伝えします。
資格取得サポートのある求人から探したい方は資格取得サポートありの工場求人一覧をご覧ください。
資格取得支援制度の3つの形
ひとくちに支援といっても、会社によって中身が違います。求人票に「資格取得支援あり」と書かれていても、どの形かまでは分かりません。
| 形 | 内容 | 受け取り方 | 導入の多さ |
|---|---|---|---|
| 費用補助 | 受験料・講習費・教材費を会社が払う | 会社が直接支払うか、立替後に精算 | もっとも多い |
| 合格報奨金 | 合格したら一時金が出る | 給与に上乗せされる | 中程度 |
| 勤務時間内の受講 | 講習日が出勤扱いになる | その日の賃金が出る | 大手に多い |
いちばん価値が大きいのは3番目です。フォークリフトの講習は最短でも2日、未経験なら4〜5日かかります。この日数が有給休暇や欠勤ではなく出勤扱いになれば、費用の補助と合わせて実質的な負担がゼロになります。
求人票で確認したい4点
- 対象となる資格の範囲:どの資格まで支援されるか
- 支援の上限額:全額か、一定額までか
- 受講日の扱い:出勤扱いか、休みを使うか
- 返還条件の有無:一定期間内に退職した場合どうなるか
工場で支援の対象になりやすい資格
製造業の現場で使える資格を、費用・取得日数・時給への効きめで並べます。金額は自費で取った場合の目安です。
| 資格 | 自費の費用 | 取得日数 | 時給の上がり幅 | 使う場面 |
|---|---|---|---|---|
| フォークリフト運転技能講習 | 2〜5万円 | 2〜5日 | 50〜200円 | 倉庫・部品搬送 |
| 玉掛け技能講習 | 1.5〜2.5万円 | 2〜3日 | 50〜150円 | クレーンでの吊り作業 |
| クレーン運転特別教育 | 1〜2万円 | 2〜3日 | 50〜150円 | 天井クレーンの操作 |
| 危険物取扱者乙種4類 | 受験料5千円前後 | 独学1〜3か月 | 手当3千〜1万円/月 | 化学・塗装・燃料 |
| 研削といし特別教育 | 1万円前後 | 1〜2日 | 50〜100円 | バリ取り・研磨 |
| アーク溶接特別教育 | 1.5〜2万円 | 2〜3日 | 100〜200円 | 溶接工程 |
| 有機溶剤作業主任者 | 1〜1.5万円 | 2日 | 手当3千〜1万円/月 | 塗装・洗浄 |
| 機械保全技能士3級 | 受験料1.5万円前後 | 独学2〜4か月 | 100〜300円 | 設備の保守保全 |
| 第二種電気工事士 | 受験料1万円前後 | 独学3〜6か月 | 200〜400円 | 設備の電気工事 |
| 衛生管理者 | 受験料7千円前後 | 独学3〜6か月 | 手当5千〜2万円/月 | 安全衛生の管理 |
いちばん取りやすくて効きめが早いのはフォークリフトです。講習を受けて修了試験に合格すれば取得でき、落ちる人はほとんどいません。費用と日数の詳細はフォークリフト免許の費用|経験別5パターン早見表、取得後の待遇はフォークリフト免許の年収・時給で解説しています。
研削といし特別教育は、バリ取りや研磨の工程で電動工具を使うために必要な資格です。作業内容はバリ取りとは?研磨との違い・仕事内容・時給にまとめています。製造業の資格全体は製造業の資格一覧20選|年収アップ効果をご覧ください。
会社の支援と国の給付金の違い
資格の費用を軽くする方法は、会社の制度だけではありません。国の教育訓練給付制度も使えます。2つは併用できない場合があるので、違いを押さえておいてください。
| 項目 | 会社の資格取得支援 | 教育訓練給付制度 |
|---|---|---|
| 出どころ | 勤務先 | 雇用保険 |
| 対象者 | その会社の従業員 | 雇用保険の被保険者など |
| 対象の資格 | 会社が決める | 指定された講座のみ |
| 受け取り方 | 会社が負担または精算 | 受講後にハローワークへ申請 |
| 返還条件 | 付く場合がある | ない |
| 在職中でなくても使えるか | 使えない | 離職後1年以内なら使える |
教育訓練給付制度の給付率
国の制度は、講座のレベルによって3種類に分かれます。
| 種類 | 給付率 | 上限 |
|---|---|---|
| 一般教育訓練 | 教育訓練経費の20% | 10万円 |
| 専門実践教育訓練 | 50% | 年間40万円 |
| 専門実践(資格取得+1年以内に就職) | 70% | 年間56万円 |
| 専門実践(修了後の賃金が5%以上上昇) | 80% | 年間64万円 |
一般教育訓練給付金は、雇用保険の被保険者期間が3年以上(初回に限り1年以上)ある方が対象で、支払った教育訓練経費の20%が支給されます。上限は10万円です(出典:厚生労働省「教育訓練給付金」)。
フォークリフトのような短期の技能講習は、国の指定講座に含まれていないことが多くあります。その場合は会社の支援を使うのが現実的です。どの講座が対象かは厚生労働省の検索システムで調べられます。
返還条件に注意する
資格取得支援でいちばん見落とされやすいのが、退職したときの扱いです。
「取得から2年以内に退職した場合は費用を返還する」という条件を付ける会社があります。金額が数万円なら影響は限られますが、数十万円の講座だと退職の判断そのものを縛ります。
確認しておきたい5点
- 返還の対象になる期間:1年か2年か、それ以上か
- 返還する金額:全額か、経過期間に応じて減るか
- 返還が必要になる理由:自己都合のみか、会社都合も含むか
- 書面になっているか:口頭の説明だけだと後で食い違う
- 給与から天引きされるか:一括請求か分割か
労働基準法16条は、労働契約の不履行について違約金や損害賠償額をあらかじめ決めておくことを禁じています(出典:厚生労働省「労働条件・職場環境に関するルール」)。資格取得費用の返還を求める合意が常に有効とは限らず、実質的に退職の自由を制限しているとみなされれば問題になり得ます。不安があれば、労働基準監督署や自治体の労働相談窓口に確認してください。
返還条件があっても使ってよい場合
返還条件があるから避けるべき、という話ではありません。判断の目安を挙げます。
| 状況 | 判断 |
|---|---|
| 費用が数万円・期間1年 | 使ってよい。取得後の時給上昇で回収できる |
| その会社で長く働くつもりがある | 使ってよい。返還の場面が来ない |
| 費用が数十万円・期間3年以上 | 慎重に。書面で条件を確認する |
| すでに転職を考えている | 自費か国の給付金を使うほうが自由度が高い |
申請から取得までの流れ
会社の支援を使うときの手順です。工場では上司の推薦が起点になることが多くなります。
- 上司に希望を伝える:どの資格を、なぜ取りたいかを話す
- 制度の対象か確認する:総務か人事に対象資格と上限額を聞く
- 申請書を出す:受講する講習機関と費用を記入する
- 受講日を調整する:シフトを組み替えるか、出勤扱いにしてもらう
- 受講・受験する
- 修了証を提出する:ここで費用が精算される
- 手当や時給の改定を確認する:翌月から反映されるか聞く
7番目を必ず確認してください。資格を取っても、申告しなければ時給が変わらない会社があります。修了証を提出したうえで、いつから待遇に反映されるかを聞いておくと取りこぼしがありません。
上司に伝えるときの言い方
| 状況 | 伝え方の例 |
|---|---|
| 作業の幅を広げたい | 「フォークリフトを取れば搬送工程も手伝えるので、受講させていただけませんか」 |
| 人手不足の工程がある | 「玉掛けの有資格者が2名しかいないと聞きました。私も取得したいと考えています」 |
| 長く働きたい | 「この職場で長く働きたいので、保全の資格を取って幅を広げたいです」 |
「時給を上げたいから」だけを理由にすると通りにくくなります。現場の課題と結びつけて伝えるほうが、会社としても投資する理由が立ちます。
資格を取ったあと、時給はどれくらい上がるか
フォークリフトを例に、取得前後の年収差を計算します。時給1,300円・月160時間・残業なしの条件です。
| 取得前 | 取得後(時給+100円) | 差 | |
|---|---|---|---|
| 時給 | 1,300円 | 1,400円 | +100円 |
| 月収(額面) | 208,000円 | 224,000円 | +16,000円 |
| 年収(額面) | 2,496,000円 | 2,688,000円 | +192,000円 |
時給100円の差は、年間で19万2,000円になります。講習費が自費で3万円だとしても、2か月で回収できる計算です。会社負担なら初月から手元に残ります。時給制の収入の考え方は時給制とは?正社員でもある?月給制との違いと手取りで解説しています。
経験者として見てきたこと
私は2社目でフォークリフトを、4社目で玉掛けを会社の支援で取得しました。フォークリフトのときは4日間の講習がすべて出勤扱いで、費用も会社負担です。手出しはゼロで、翌月から時給が100円上がりました。
一方で、制度があるのに使っている人が少ない職場も見てきました。理由を聞くと「言い出しにくい」「シフトを空けられない」というものがほとんどです。制度は申請しなければ動きません。総務に一度聞いてみるだけで、状況が変わることがあります。
失敗もあります。3社目で危険物の受験料を立て替えたまま、精算の申請期限を過ぎて自己負担になりました。領収書と申請期限は、受講を決めた時点で確認しておいてください。
まとめ|制度は申請しないと動かない
- 資格取得支援制度には、費用補助・合格報奨金・勤務時間内の受講の3つの形がある
- 工場でいちばん取りやすく効きめが早いのはフォークリフト。時給50〜200円上がる
- 国の教育訓練給付制度もあるが、短期の技能講習は対象外のことが多い
- 返還条件の有無・期間・金額は、書面で確認してから申し込む
- 取得後に待遇へ反映されるタイミングを、修了証の提出時に聞いておく
- 上司に伝えるときは、時給ではなく現場の課題と結びつけて話すほうが通りやすい
時給を上げる方法のなかで、資格取得は最も確実で再現性があります。会社が費用を持ってくれるなら、使わない手はありません。
よくある質問(FAQ)
Q. 資格取得支援制度とは何ですか?
会社が資格の受験料や講習費を負担する仕組みです。費用の補助のほか、合格したときの報奨金や、講習日を出勤扱いにする形もあります。工場では作業に直結する資格が対象になることが多くなります。
Q. どんな資格が対象になりますか?
会社が決めます。工場で対象になりやすいのは、フォークリフト・玉掛け・クレーン・危険物取扱者・アーク溶接・機械保全技能士などです。応募前に対象範囲と上限額を確認してください。
Q. 資格を取ったら必ず時給は上がりますか?
必ずではありません。手当として月額で支給される会社もあれば、時給に反映される会社もあります。反映されないケースもあるため、修了証を提出するときに待遇への反映を確認してください。
Q. 途中で退職したら費用を返さないといけませんか?
会社の規程によります。一定期間内の退職で返還を求める条件が付くことがあります。ただし労働基準法16条は違約金や賠償額をあらかじめ定めることを禁じており、実質的に退職の自由を制限する内容であれば問題になり得ます。書面で条件を確認してください。
Q. 会社の支援と国の給付金は併用できますか?
できない場合があります。教育訓練給付金は本人が支払った教育訓練経費が対象なので、会社が全額負担した費用は対象外です。どちらを使うかは、対象講座かどうかと支援の手厚さで判断してください。
Q. 未経験で入社してもすぐに支援を受けられますか?
会社によります。入社後6か月経過してからという条件を設けているところが多く、試用期間中は対象外とする会社もあります。応募時に適用の条件を聞いておくと計画が立てられます。
Q. 資格取得支援がない会社ではどうすればいいですか?
国の教育訓練給付制度が使えるか確認してください。対象外の短期講習であれば自費になりますが、フォークリフトなら2〜5万円で、時給が100円上がれば2か月ほどで回収できます。
工場・製造業の求人情報をLINEで受け取る
ものづくりキャリアナビ公式LINEでは、新着求人・高収入求人の情報や、工場転職に役立つ情報をお届けします。転職の相談もLINEで気軽にどうぞ。
友だち追加して求人情報を受け取る運営: カチノコス
